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シングルファザーとしてどんな働き方を選択してきましたか?―ウェブデザイナー 西谷竜太

西谷デザインの屋号で、ウェブデザイナーとして活躍している西谷竜太さん。これまでは個人事業主のサイトや、一般社団法人DORが企画するシタマチコウベや、このKOBE CREATORS NOTEサイトのリニューアルなどを手掛けてきました。
3年前から西谷さんは一人息子を引き取って二人暮らし。シングルファザーとして、いかに子育てと仕事を両立させてきたのか。さらにこれからどんな働き方を目指していくのかについてお話を伺いました。

|コワーキングスペースでの出会いが仕事につながった

―以前はアパレル業界にいらっしゃったそうですね。

西谷:もともとは渋谷の大手アパレル店で働いていて、カスタマーサービスの社員の中で表彰されたこともありました。このままアパレルでいいかなと思っていた矢先に、東日本大震災でエレベーターに閉じ込められたんです。徒歩で家に帰って、また翌日から出勤しないといけなくて。結局、社員だと組織に使われてしまうので、何か自分でできたらいいな、独立したいと思うようになりました。

―そこでウェブデザイナーを目指したのはどうしてですか。

西谷:もともと小さい頃から絵を描いたり、ものを作るのが好きで、ほんとはクリエイティブな職に付きたかったのですが、そういった学校にも行ったわけではないので敷居が高い職なのかなと思ってました。それでも独立のことを考えたときに、好きなウェブの業界でウェブデザインならいけそうかなと甘い考えで業界に飛びこむことにしました。
でも、知識はゼロだったので、アパレルの販売代行をしつつウェブの運営しているファストコムという会社に入って、そこで実地で仕事を覚えました。僕はアパレルもできるから採用してもらえましたが、実際は入って1年ぐらいはアパレルの方をやっていました。代表には独立志望だと伝えてあったので、早くウェブの方に異動したいとずっと言ってました。少しずつ任されるようになって技術を身につけて3年くらいで独立。育ててくれた当時の上司・先輩方には感謝しかないです。独立して半年ぐらいで元妻の都合があって神戸へ移ってきました。

―東京から神戸に引っ越して、土地勘もないところでどうやって仕事を探していったのでしょうか。

西谷:当時は須磨に住んでいて、家では仕事できないタイプだったのでコワーキングスペースを探していたんです。最初は三ノ宮のコワーキングスペースに通っていました。ちょうどそこにウェブデザインができる人がいなかったので、周りからお仕事をいただいたりして、最初は美容院、霊園などのウェブサイトを作っていました。

―そこから新長田に拠点を移されたのはどうしてですか。

西谷:子どもを自転車で保育園に送り迎えしていたので、そのまま自転車で通える範囲内で探したところ、たまたま新長田にできたばかりのコワーキングスペースを見つけたんです。そこが、この3月まで一緒に仕事してきたDORの岩本(順平)が運営しているところでした。そこでもやはりウェブデザインができる人がいなくて、岩本に相談を受けるうちに仕事につながって、DORにも所属するようになりました。

―DORでの仕事で特に印象的だったものはなんですか。

西谷:DORで受けていたシタマチコウベのお仕事が大きくて。1年に1回、リニューアルを重ねているサイトなんですが、そのたびにいろいろ提案したり改善していったりしながら一緒に成長してこれました。

シタマチコウベは神戸市営地下鉄海岸線沿線プロモーションを目的に、2018年から継続するウェブマガジン。※https://shitamachikobe.jp/
こちらもDORで手がけた「日米芸術家交換プログラム」のサイト。 ※https://www.nichibei-artists.org/


|子どもにも仕事を見せながら

―DORに籍を置きながら順調に仕事されてきたようですが、4月からはDORを卒業、完全に独立した働き方に変わるそうですね。

西谷:4月から子どもが小学校に入学するので、自分の働き方が変わってちょっと迷惑をかけそうなので。また、今は営業や打ち合わせは岩本が全部やってくれているのですが、自分もまたそういうことに関わっていきたいと思った部分もあります。ウェブをつくるには考えることも必要だと思うのですが、今は制作業務が中心になっていて、そのあたりをもう少し自分でもやらないとなと思ったんです。

―今までは仕事はどんなペースでやっていましたか。

西谷:子どもを保育園に9時から預けて、18時までにお迎えなので、働けるのは10時から17時半くらいまでと、子どもを寝かしつけた22時以降です。限られた時間でタスクを処理していくので、タスク整理がすごく大事です。ある程度折り合いをつけて、優先順位をつけてやらせてもらってます。
子どもが小学校に上がったら送り迎えの時間がなくなるので、もう少し余裕ができるとは思います。ただ、子どもは早く学校から帰ってくるので、子どもに「遊ぼう」と言われたら遊んじゃいそうなんですよね。片方をおざなりにすることはできないんで、子どもが帰ってきてからの時間をどうしようかというのはあります。

―子育てしながらの仕事について、周りの方の理解はいかがですか。

西谷:最初に自分の働き方を説明して、それでよければという形で受けています。時代なんでしょうか、子育てされてる方からは共感いただけることは多いですね。自分の受ける仕事はまだ大企業相手の仕事が少ないので、そういう働き方も受け入れてくれるのかなと思います。DORで受けていた仕事だと、岩本が撮影もしているので、撮影現場に子どもを誘ってくれたり、事務所に連れてきたり。以前はDORの事務所が新長田のコミュニティスペース内にあったので、周りの人が子どもを見てくれたり、キッチンで晩ご飯を作って食べて帰ったりと、だいぶ助かりましたね。

―周りの方は応援してくださってるんですね。

西谷:あとは、元妻がヘアメイクの仕事をしているので、たまに子どもを仕事現場に連れて行ってもらったりするなど、普段できない経験もさせてます。元妻とは養育パートナーという形で協力し合って、子育てを続けてるんです。

―そうだったんですね。お子さんは西谷さんのお仕事をどう受け止めているんですか。

西谷:最近、「こういうの作ったよ」って子どもに仕事を見せてるんです。共通体験を作る意味もあるし、ただでさえ子どもにとってはわかりづらい仕事でもあるので。「遊んで」って子どもから言われた時に、「今、こういう仕事をしてて」と説明するとすんなり受け入れて、わかってくれるようにもなりました。子どもに我慢させてちょっとかわいそうなんですけど。そうやって仕事を見せていると、子どもが結構応援してくれるんですよね。この間、保育園で卒園式があったんですけど、将来の夢はデザインをしたいって言ってくれて、ありがてえなと。


|仕事を通して学び続けることがある

―ウェブデザインの業界では技術革新についていくのも大変だと思うのですが。

西谷:そうですね。やや甘い考えから入りこんだ業界ですけど、今ではウェブの世界の奥深さと難しさを実感しています。もちろん勉強はやっていますが、毎日何かインプットするというよりは、仕事の中で必要に迫られて、それを調べて新しいことにキャッチアップしていくというやり方が多いです。バージョンが変わって仕様が変更になるとか、とにかくキリがなくて、ある程度絞って勉強していかないと日常の業務ができなくなっちゃうので。

―デザイン面でもはやりすたりが大きいと思うのですが、そのあたりはどうしていますか。

西谷:自分で気になるウェブサイトをブックマークして、流行や好きなテイストをインプットしています。そういうのは好きだからできる部分が大きいと思いますね。ウェブ業界の、そうやってすぐにトレンドを見つけて、学んで、実施できるところに魅力を感じています。いろんな方のお話を聞いたり、いろんな業種に関われるところも面白いですね。

奈良の総合造作材を取り扱っている「垣本ハウス」の企業サイトをデザイン。撮影はDORの岩本順平。 ※https://kakimotohouse.co.jp/

―サイトを作る時にはどういう点に気をつけていますか。

西谷:見やすさ、使いやすさに気をつけるのは当然ですが、仕事でも学びが欲しいので、新しいことを取り入れたり、デザインにワンポイントを取り入れたりするなどを心がけています。最近はUXにも意識していて、心理学に基づいた考え方なのでデザインの仕事から離れても応用がききそうだなって。

―ウェブデザインは成長業界なので新規参入してくる人も多いと思いますが、何か思うところはありますか。

西谷:ウェブデザイナーのスクールが増えていて、人手も少ないのでなり手は増えているのですが、技術力の差は気になっています。間違った方向に行ってるなと感じる方もいるので、そういった方に正しい知識を伝えられたらいいなと思っています。自分も仕事がある限りはウェブデザイナーを続けていくつもりですけど、極端な話、子どもがいれば仕事は何でもいいなって。子どもがいればなんでも頑張れるもんなんやなと思うようになりました。

西谷竜太

1986年生まれ。山口県出身。都内の制作会社でウェブデザイナーとして働き、2015年よりフリーランスに。2017年、神戸へ移住。ウェブ制作におけるディレクション、デザイン、HTML・CSS、CMS(WordPress)でのウェブサイトの構築を手がける。



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