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神戸で始めた〝ラボ的〟取り組みって!?ーアートディレクター・MAQ LAB KOBE 小野良太

東京・大阪のクリエイティブカンパニー株式会社MAQが、2018年にKIITOに開いたデザインの挑戦の場「MAQ LAB KOBE」。MAQメンバーでアイデアを出しあって手作りしたというこのラボ。広告を中心とするクリエイターとして活躍してきた小野さんが、神戸の街でデザインの可能性を探求しています。

チャレンジを求めて神戸につくった拠点

ーまずは、株式会社MAQのことについて教えてください。

小野:MAQは1975年に大阪で誕生した会社です。その後、東京に本部ができて、3年前の2018年にこのMAQ LAB KOBEができました。主にグラフィックデザインの制作で、企業さんや代理店さんとのお付き合いをしてきました。

ーどういった経緯で神戸に?

小野:専務取締役の山阪(佳彦)が2015年に神戸市のクリエイティブディレクターに就任し、神戸との繋がりができました。これを機会に、神戸に事務所を作ろうという意見が出て、広告以外のこともできたらいいなという気持ちがあったので、ラボという位置付けの事務所を作りたいと上申したんです。

ーなるほど。ラボには小野さんが?

小野:はい。今は僕一人でここにいて、時々スタッフが駆けつけてくれます。実家が神戸で、現在も花隈に住んでいることもあって。神戸にスペースをつくるなら、こういったアトリエみたいな雑然とした雰囲気で思いついたらすぐ何かを作ったりできる空間がいいなと考えました。

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ネオンサインを設置したり、壁一面を本棚にするなど、働く環境もスタッフみんなで実験的に作ったそう。

ー実験的な場所でもありますし、ゼロからのスタートに近いですよね。ラボとしての仕事はどこから始まったんですか?

小野:始まりは、やはり神戸市の案件からでした。神戸市こども家庭局の「子育てするなら神戸! 100の理由」というキャンペーンを作って、のちに「KOBE子育てCollection」という広報も手がけました。これはどちらかといえば、ラボ的というよりは、これまでのMAQの仕事の流れに近いものですが。

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増えてきたラボとしての取り組み

ー2018年に開催した「WHY PURPLE?展 髪を紫に染めた貴婦人たちの世界」もMAQ LAB KOBEとしての取り組みでした。パープルがDV(ドメスティック・バイオレンス)の予防啓発のシンボルカラーであることを伝えるための企画ですね。

小野:はい。「髪を紫にした女性が多いよね」という話から企画を考えました。これまでの仕事のやり方だとグラフィックだけ作っていたらよかったけど、「展覧会の場所どうする?」「ゲストいるんちゃうん?」というところから、「撮影どうしよ?」というところまで。写真は、大阪のスタッフを呼び、何チームかに分けて街角ハンティングして撮影させてもらいました。根幹のところから組み立てて、全部をハンドリングできたのは今までと違う経験でした。補助金申請をした経緯もあり、本当に大変でした。

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ーよく紫色の髪をした人をこれだけ集めて写真が撮れましたよね。

小野:街を駆けずり回りました(笑)。後から「こういうのは事前に仕込んでおくもんや」って怒られて。そういったことも知らなかったんですよね。何も準備せず、気持ちと勢いだけで飛び出してしまいました。

ー2019年には、兵庫運河周辺で「兵庫ニット芸術区」というイベントも開催されました。

小野:これは兵庫区まちづくり課のプロポーザル案件。兵庫運河周辺の地域活性化が目的で、ニットアーティストの力石咲さんを呼んで、地元住民の方たちと一緒に街そのものを編んだり、ワークショップをしました。

ーこうしたワークショップってコントロールできない部分もあると思うのですが、グラフィックデザインの仕事との違いに不都合は感じませんでしたか。

小野:あまりなかったですね。例えば「こういう作品を作ろう!」となると、「もっとここをこうして…」的なグラフィックの観点からの思いが出てきたりしますが、この企画では、みんながあちこちで自然発生的にクリエイトする、というのがいいなと。

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ー地域活性化のお題に対して、編むことを提案したのはMAQ側からですか?

小野:はい。これも大阪のスタッフにも手伝ってもらったんですけど、中には「それをやって何になるの?」という声もあって…難しさを痛感しました。とはいえ、「WHY PURPLE?展」もそうですが、広告でもなくグラフィックでもない形はこれまでとは全く違うチャレンジでした。神戸に来てやりたかったラボ的な仕事だと思っています。

ー代理店経由ではなく、クライアントとの直の仕事ですしね。

小野:実は、神戸に事務所を設けた裏テーマは「脱・代理店」なんですよね。代理店の川上から制作プロダクションの川下に発注するという業態なので、そこが止まっちゃうと仕事は何もなくなってしまう。特にコロナ禍では顕著でした。なので、プロポーザル案件であれ、公共の仕事をさせていただいた経験はよかったなと思っています。同時に、直でお仕事をすることの大変さも感じています。これまでは代理店でも制作陣との付き合いが多かったので、話す言語や感覚をお互いがビビッドに理解できた部分がありましたから。

神戸の街の窓口になっていきたい

ー現在進行中のお仕事も教えてください。

小野:Urban Innovation Japan(UIJ)の取り組みで、「フロー脳ゲーム」というカードゲームを考案しました。業務フローを楽しく作れるフローゲームなんです。どんな仕事にもあるフローを俯瞰して、物事の流れを見える化することで課題を見つけやすくするためのものです。先日は兵庫県のいろんな市町の担当者さんに集まってもらって、ワークショップを行ないました。住民税の申請書類に関わる業務フローを作ったりと、結構盛り上がりました。

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「整理/分析」など人や手順を表すカードを並べるシンプルな作り。「業務改善のための入り口として活用してもらいたい」。

ーこの先のMAQ LAB KOBEとしての目標は?

小野:神戸案件の入り口になればいいなと。役所以外の企業さんとの取り組みをやっていきたいです。商店と組んだものとか。

ーなるほど。チャレンジングな経験を積みながら、今は模索中ですね。

小野:はい。マネタイズ部分と、新しい試みややりたいことの折り合いをどうつけていくのかが課題です。普段の広告業の方が売り上げにダイレクトに繋がるので…。楽しい部分でもあるし、難しい部分でもありますね。コロナで今後の計画が不透明になっている部分もありますが、愛着ある神戸の街でワクワクするデザインを探求していきたいです。

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