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イラストだけに留まらない仕事の幅はどうして生まれましたか。―イラストレーター オオスキトモコ

神戸市 KOBE CREATORS NOTE

硬い内容をわかりやすく伝えるイラストルポやイラストインタビューで、農業や食などの分野でひっぱりだこ。さらには写真、文章など、幅広い分野で活躍するオオスキトモコさん。
最近では三級知的財産管理技能士の資格を取得し、クリエイターの著作権についても自身のウェブやSNSで積極的に情報発信しています。オオスキさんはどのようにこれらの知識や技術を身につけ、仕事につなげていったのでしょうか。

|神戸に引っ越した途端にコロナ禍に


―もともと東京で活動されていたそうですが、どうして神戸に移ることになったんですか。

オオスキ:夫の転勤で2020年の3月に引っ越してきました。ちょうどコロナが日本で流行し始めて、そのまま緊急事態宣言に入ってしまいました。

―新しい土地に引っ越してきたばかりで難しい状況になってしまって、人脈もない中で困りませんでしたか。

オオスキ:はい。ただ幸いにも5月までは東京にいたときに受けた仕事が忙しくて。少し落ち着いた頃に特別定額給付金の手続きがあって、神戸市のホームページを調べ始めました。そのときに、この「KOBE CREATORS NOTE」も発見したんです。

―東京で22年間活動されてきたそうですが、初めての地に不安はありませんでしたか。

オオスキ:神戸市出身でいまは西宮在住のイラストレーターの生駒さちこさんがもともと友達だったのでいろいろ教えてもらえました。それに、神戸市はクリエイターが利用できる補助金があったので助かりました。私も「チャレンジ支援補助金」を利用して、2021年1月に元町にあるギャラリーvieさんで個展を開くことができました。

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神戸での個展に合わせて、これまでの仕事をまとめた小冊子も制作、配布した。

―東京と神戸とで仕事に変化はありましたか。

オオスキ:正直なところ、いまも東京の仕事を神戸でやっているという状態で、神戸の仕事は受けていないのでなんとも言えないのですが。しいて違いを挙げれば、東京の方がイラストギャラリーでも装丁や絵本とジャンル別に細分化しているのですが、神戸はそこまで分かれていないと感じますね。東京にいたときは、そういったギャラリーに行くとそれなりに出会いがあって、編集者の方とつながったりもしました。でも、神戸はそういう業界みたいなものが見えづらくて、ネット営業をしっかりしているクリエイターの方が多いなと感じました。

―そういった地域による仕事環境の違いは、仕事にも影響があると感じられることもありますか。

オオスキ:いまは結局、探す側もネットを頼りにする人が多いから、実は住む場所はあまり関係ないと思います。私は古いタイプで、本当に今まで人の繋がりで仕事していたんだなって。一方で、ネットは情報が多すぎて選べないので、また人づての紹介で探すというターンになってきているとも感じています。昨年神戸で開いた個展にもいろんな人が足を運んでくれ、個展を見てくれた方の紹介から仕事につながったこともあります。私も神戸のイラストレーターさんが個展を開く際は、なるべく足を運んで情報交換するようにしています。

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JAグループの月刊誌『家の光』(2020年6月号)でのイラストルポ記事。

―ちなみに営業のコツはありますか。

オオスキ:「はじめに大きなお願いをしてから、それを断られたあとに小さなお願いをすると、そのお願いが通りやすくなる」という、「ドア・イン・ザ・フェイス」という営業テクニックを何かのセミナーで知ってから、それを実践しています。出版社や新聞社などメディアの編集部に行く際は「連載企画」をいくつか持っていくようにしています。「連載は無理だけどイラストなら」といくつかお仕事をいただいたことがありました。

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|専門を3つ持ってアピール


―競争相手のとても多いネット上で見つけてもらうための工夫や、他のイラストレーターさんとの差別化はどのようにしていますか。

オオスキ:若いときに言われたのが「何かの専門を3つ持ってそれをアピールするといい」ということでした。10年以上前ですが『週刊文春』で、「賢者の旬レシピ」という芸能人や著名人の方のレシピに挿絵をつける仕事を2年ぐらい毎週やっていたので、そこから「食べ物系が得意です」と言うようになりました。
その後、芥川賞作家の赤染晶子さんの小説の挿絵を『文藝春秋』に描く機会があって、校舎の横の木に蔦がからまっているような絵を描いたんです。その絵を名刺に入れていたら、たまたまギャラリーで知り合ったNHK出版の『趣味の園芸』の編集者の方に「植物描けますか」と言われて、自分としては「風景画」のつもりでしたが、「植物」といえばそうだなと思って、いままでに描いた絵の中から植物が入った絵を持って営業に行きました。

―それが『趣味の園芸 やさいの時間』のお仕事につながるんですね。

オオスキ:当時は、イラストだけじゃだめ、自分でコンテンツが作れるようにならなければと思っていて、ハーブを育てたけど枯れてしまったというコミックエッセイを描いてみたところだったんです。それを『趣味の園芸』の編集者に見せると、『趣味の園芸 やさいの時間』の編集者に引き合わせてくれました。そこから、『趣味の園芸 やさいの時間』での連載「プロフェッショナル やさいの流儀」につながりました。

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コミックエッセイの賞に出すために描いていたコミックエッセイ。これ自体はどこにも掲載されなかったが、『趣味の園芸 やさいの時間』での連載につながった。

―3つ目の強みはイラストエッセイやイラストルポが描けることなんですね。文章もご自分で書かれていますが、もともと文章は得意でしたか。

オオスキ:インテリア雑誌の編集部でアルバイトしていた頃、プレゼントページと読者ページの担当だったんです。一応、そこでの文章と、軽いエッセイみたいなものを書いたことがあります。それが商業誌で文章を書いた最初ですね。

―ウェブメディアのDANROでは「私と東大駒場寮」や「マッチを集める」といった連載もされていますよね。イラストレーターという肩書きを超えての活動に見えます。

オオスキ:駒場寮については、大学の卒業制作として寮の写真を撮っていたんですけど、写真だけで伝えられることには限界があるなって、その時思ったんです。それで結構、写真に絶望したっていうか。それで写真だけでは足りないからテキストもと思って、住んでいる人のインタビューをつけました。私としては自分の肩書きを増やしていったという意識はなくて、伝えたいことに対して伝わりやすい表現を選んでいった結果にすぎないんです。
とはいえ、写真と文章に関しては好きですけど、胸を張ってというレベルではないと思っています。特に写真は好きなものしか撮れないので、指示されたものを撮影するような仕事はやっていません。

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ウェブマガジン『DANRO』に掲載されているオオスキさん執筆記事。→https://danro.bar/author_category/osuki_tomoko/

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オオスキさんがイラストを手がけた書籍。

|専門家の言葉をわかりやすく伝えるために


―新しいウェブサービスやクリエイターの法知識といった役に立つ記事がたくさんあって、以前からオオスキさんのブログの愛読者だったのですが、ブログについてはどのような視点から情報発信されているのでしょうか。

オオスキ:結構忘れっぽいので、ブログにでも書いておかないと自分が忘れてしまうんです。だからメモみたいな感じで書いていて、自分の記事を自分で検索することもあります。同じような仕事をしている他の人には、役に立つことがあるんじゃないかと思いながら発信しています。

―三級知的財産管理技能士の資格を取得し、クリエイターの権利についても声を上げてらっしゃるのは、そういった思いもあるんでしょうか。

オオスキ:イラストの無断二次使用の被害を受けたのがきっかけです。当たり前の権利が守られてないと感じることが多いので、自分で勉強するようになりました。イラストレーターの立場から著作権や法律について発信をしなければ、自分の権利や人権が奪われると感じたんです。自分の作ったものの権利を大切にするというのは、人として基本的な権利だと思います。知的財産管理技能士の資格を取ったのは、いつかイラストレーション関係の雑誌で法律の連載をしたいんですが、そのベースがないのでまずは自分が資格を取るところから始めました。

―こういうお仕事をしたいなというときに、情報発信から始めるんですね。

オオスキ:「詳しい人」と思われるので、友達や知り合いから相談されやすくなったり、情報発信することで「こういうことに興味があるのでは?」と情報が集まったりするので、アピールになります。以前、食の安全や健康について大事だけどあまり知られていないようなことをイラストにするというお仕事があったんです。文章で読むのはとっつきづらいけど、イラストだとわかりやすいと好評でした。もっと知ってほしいなと思ってそのイラストをTwitterでも発信していたら、それを見た方から仕事の依頼が来たことがありました。

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―大事な情報だと思ったから自分で発信されたんですね。

オオスキ:使命感みたいなものに近いです。『趣味の園芸 やさいの時間』の取材で専門家の方が自分のやっていることを一般の人に伝えるために、すごく尽力されていることを知ったときに、突然の使命感のようなものが湧いてきたんです。

―伝えるべき情報をいかに出すかということを考えるようになったと。

オオスキ:以前は「自分の作品」で直接お金を稼げる作家にならなければと思っていましたが、「作家」にならなくても、人が伝えたいと思っていることを、よりわかりやすく伝えることもイラストレーターの仕事なのではないかと思うようになりました。それからは、自分が作家になることにあまりこだわりはなくなりました。専門家の難しい言葉が自分のイラストで少しでも伝わりやすくなるのであれば、それでいいと思えるようになったんです。

―せっかく面白い話や役に立つ話を聞いたからには、他の人に知ってもらわないともったいないという気持ちになりますよね。

オオスキ:現場に行かないとわからないことっていっぱいあるじゃないですか。だから自分の作品も大事なんだけど、そうやって誰かの役に立てるのであれば、伝えていきたいなと思います。

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オオスキトモコ

熊本県生まれ。現在は神戸市在住。2002年武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業。大学卒業後、セレクトショップ販売員、インテリア雑誌の編集アシスタントを経て、2004年よりイラストレーションを始める。
https://www.tomokooosuki.com/


Kobe Creators Noteでは神戸市内で活躍するクリエイターの情報などを発信しています。


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