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食や農に関するプロジェクト、応援させてください。―プロジェクトマネージャー 山田真輝

ブラジル、ニカラグア、インドで育ち、幼少の頃から世界中の食や農に触れてきた山田真輝さん。その原体験を活かし、現在は食や農に関する様々なプロジェクトやイベントに携わっています。いい動きをしているプロジェクトには熱意のあるプロジェクトマネージャーがいる――。プロジェクトマネージャーの役割や仕事について聞いてみました。


|海外生活で芽生えた食や農への興味


―食や農に興味を持った時期はいつ頃からですか?

山田:父親が発展途上国の開発支援をするという仕事をしていて、幼少期はブラジルやニカラグアといった国に住んでいました。父親は様々な発展途上国に関わる中で、食べ物が重要だということを認識していて、農業は本当に大切にしなさいと言っていました。また、海外に住むことで、日本とは何かという思いが生まれ、農村や伝統産業、食べ物といったことに関心が向いていきました。

―そうした原体験があって、食や農とはどうやって関わっていったのですか?

山田:大学時代に、東京の青山ファーマーズマーケットの運営に関わるようになりました。そのまま卒業後も続けて、3年間ほど、プロジェクトマネージャーの卵のような立場でお世話になりました。

青山ファーマーズマーケットの様子

―実際に現場に出てみて、感じたことはありましたか?

山田:自分がすごくいいなと思って誘った生産者が、マーケットに来て全然売れなくて、落ち込んで帰るのを見た時にすごく申し訳ない気持ちになりました。プロダクト自体は99%出来上がっているのに、残りの1%の伝え方とか、見せ方に課題を感じている生産者がたくさんいるなと感じて。そうしたことを手伝える仕事ができたらいいんじゃないかと思い、デザイン事務所を全国で探した結果、神戸に辿りつきました。


|自分の強みは、マネジメントなのかもしれない


―神戸にデザイン事務所を構えるTRUNK DESIGNに入社したのですね。

山田:はい。デザインの道を志したとはいえ、僕はそれまでデザインをやったことがなかったので、まずはプロジェクトマネージャー枠で役に立てるように働いていました。

―イメージの湧かない人もいると思うのですが、プロジェクトマネージャーってどんなことをするのですか?

山田:一番重要なのは、調整でしょうか。あらゆる調整と根回し、あとは進行管理みたいなものがメインになるかなと。TRUNK DESIGNは、圧倒的なデザイナーである代表の堀内康広さんがいるので、プロジェクトマネージャーの仕事が基本でした。

―どこかのタイミングでデザインの仕事もしてみたいと思っていましたか?

山田:そうですね。デザインについては、オンラインコースなども受講して自分から学びました。でも1年間働いてみて、自分にはデザインがあまり向いてないというか、プロジェクトマネージャーの方が貢献できる部分が多いのではないかと気づいていきました。

―その後退職され、プロジェクトマネージャーの道を歩むことになるのですか?

山田:それだけというわけではありません。神戸でファーマーズマーケットなどを手掛けるLusieという会社で、ROKKONOMADという六甲山のプロジェクトに関わらせていただいたり、有機農家チームBIO CREATORSと、種まきからビールを作るローカルビールスクールや畑の食卓イベントFARM ARCHEMIA、ホームページの作成といった形で仲間に入れてもらったりしました。また、農村地域での創業を目指す、神戸農村スタートアッププログラムでは、広報や記録といった役割を担っています。

畑の食卓イベント、FARM ARCHEMIAの様子

―その他にはどのようなプロジェクトに関わっていますか?

山田:2022年の4月から、神戸大学の地域連携センターで週2日ほど働いています。大学内の地域研究を社会と繋げていく仕事です。また、日本酒や台湾料理といった様々な食に関するイベントや取組みのプロジェクトマネージャーとして活動しています。


|情熱的に寄り添うプロジェクトマネージャーに


―プロジェクトマネージャーとして、大事にしていていることはありますか?

山田:その人やチームが何をしたいかっていうところに尽きるなと思っています。以前にすごく失敗したことがあって。その人が何をしたいかっていうのと同時に、自分が何をしたいかってところも入れてしまい、全然うまくいかなかったことがありました。本当に、その人が何をしたいのかっていう意識が重要なんだなと最近つくづく感じています。

―そうした意識がある中で、山田さんが入ることでチームの強みになれることはありますか?

山田:食べ物とかモノ作りに対しての感覚でしょうか。これまで様々な場所でそうしたテーマに関わって学んできた経験があるので、そのフィールドにおいては、情熱的に寄り添える部分がたくさんあると思います。各分野において、理解のあるプロジェクトマネージャーがいるというのはすごく重要です。また、グローバルな感覚も伝えられるのではないかと思っています。幼少期から今まで、様々な国のモノ作りや食べ物の世界を見てきている中で、流れを読み取っている感覚はあります。

|主体的に関わり、推進できるから面白い


―今後、関わってみたい仕事はありますか?

山田:やはり食に関わることや、自分が入ることでもっと地域の農業との繋がりが生まれるようなものをやってみたいです。また、今勉強をしているのがSROIっていう社会的インパクト評価です。社会的な活動をしている組織の成果を評価する一つの指標で、投下した資本に対して、どれぐらいの社会的な成果があったのかっていうことを数値化します。農業や食、そしてモノ作りなど、過小評価されてるものがたくさんあるような気がして、その価値を数値的に説明することで、物事を前に進めていけたらいいなと思ってます。

―最後に、プロジェクトマネージャーの魅力を教えてください。

山田:プロジェクトに対してめちゃくちゃ主体的に関われることです。例えば、ライターやグラフィックデザインなど、部分的に関われる役割はたくさんありますけど、プロジェクトマネージャーは一番コアの部分になれます。そのプロジェクトが目指すものに共感できればとても楽しいので、それはすごい魅力的ですね。泥臭いこともたくさんあるので、誰もやらなかったら自分でやるという意識もありますし、ライターやカメラマンが間に合わなければ僕がやりますと(笑)。そうしたことも含めて、最後の受け皿みたいな存在でありたいですね。


山田真輝

1994年、大阪生まれ。慶應義塾大学卒。ブラジルとニカラグア、インドで育ち、植民地化で塗り替わる文化や、格差、環境を無視した開発やビジネスモデルに違和感を覚える。大学では、企業の事業性と社会性を両立したマーケティングと、官民連携モデルでの地域課題アプローチを学ぶ。2016年より日本最大規模のマルシェ「青山ファーマーズマーケット」の企画運営を通じて、都市と農をつなぐ活動と日本の食文化に未来を感じる。2019年に神戸に移住し、TRUNK DESIGN、Lusieを経て、食・農・伝統産業が交わる分野のプロジェクトや、神戸農村スタートアップ、神戸大学大学院能楽研究科地域連携センターに携わる。

masaki@gyoninben.com