神戸市 KOBE CREATORS NOTE
自然とやりたい仕事をつなげていくにはどうすればいいですか。―デザイナー・藤原幸司
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自然とやりたい仕事をつなげていくにはどうすればいいですか。―デザイナー・藤原幸司

神戸市 KOBE CREATORS NOTE

4S DESIGN(フォースデザイン)として神戸市の広報物、塩屋にある洋館「旧グッゲンハイム邸」関連のイベントや、洋菓子店、酒屋といった個人商店の印刷物、サイトデザインを手がける藤原幸司(ふじわらこうじ)さん。神戸を中心に手広く活動していますが、ほとんど営業活動をしたことがないそう。
大きな転機は旧グッゲンハイム邸の敷地内に事務所を移したこと。そこから人伝てに仕事が来るようになったのだとか。藤原さんの仕事に対する向き合い方をお伺いしました。

|制作物が営業ツールとなって仕事が継続

ー塩屋に事務所を移したことがお仕事の転機になったそうですね。

藤原:今やっている仕事のほとんどが塩屋に移ってからのつながりで始まったものですね。それまでは新開地の自宅でやっていましたが、子育てに備えるために妻の実家が近いこともあって5年ほど前に塩屋の隣り駅に引っ越してきて、そのときに旧グッゲンハイム邸のはなれでシェアオフィスをするからと声をかけられて事務所を移しました。旧グッゲンハイム邸の裏にはシェアハウスもあるんですが、たまたまそこに当時神戸市のクリエイティブディレクターをしていた平野拓也さんが住み始めて、声をかけてくださったことから今までやってなかった市の仕事なんかも来るようになりました。

ーそこから継続して神戸市のお仕事をされていたり、塩屋の個人商店のお仕事をされていますが営業活動もされたんですか。

藤原:営業はほとんどしたことがないですね。来た仕事はほとんど拒まないんで。ローカルに根差したデザインが多いと言われることもあるんですが、僕自身ほとんど意識したことはないです。
それよりも、実績を見た方からお声がかかるという感じです。須磨の明暮焙煎所さんのお仕事は、塩屋に住んでいる方がお店のお客さんで、その方が紹介してくれたらしいんです。見てくれている人は見てくれているんだなと思いました。神戸市の仕事も同じような感じですね。神戸市のある課の広報物を作ったら、その実績を見て他の課の方が声をかけてくれてといった感じでつながっていきました。

ー制作物が結果的に営業ツールになっているような感じなんですね。

森本アリ・著『旧グッゲンハイム邸物語』(ぴあ・刊)の装丁も担当。
グッゲンハイム邸はコロニアル・スタイルの洋館。右に見える小さな離れの2階に4S DESIGNのオフィスがある。


|相手のやりたいデザインを実現することが継続のコツ


ーデザインする時に意識されていることはありますか。

藤原:そうですね。自分ではデザインがめっちゃうまいというわけではないと思っているので、お客さんの言うことをちゃんとわかりやすく伝えるようにしています。例えば神戸市の案件だったら、すべての神戸市民に伝わるように、わかりやすさや使いやすさを意識してやっています。それが結果的に先方が作りたいものとハマっているからまた声をかけてもらえるのかなとは思います。デザインのおもしろさというより、伝えたい情報がどうやったら伝わるかを意識しています。

ーそういった不特定多数の方に向けてデザインするときに意識していることはありますか。

藤原:やっぱりコミュニケーションですね。極力、現場を見たり、なるべくお客さんがどういうものを作りたいかをしゃべってもらうようにしています。僕だけでは引き出す力が足りないときには、ライターやカメラマンとかいろんな人と打ち合わせに行くこともあります。そうすると僕が気づかないことを教えてもらえる機会になるので。

先ほど話に出てきた明暮焙煎所さんのようなお店の仕事だったら、実際に何回も通ってみて、普通にお客さんとしてその店の雰囲気や店主さんのやりたいことを体感するようにしています。

「明暮焙煎所」のwebサイトのディレクションを担当。→https://akekure-beans.com


ーそういうふうに現場に行くことはお好きなんですか。

藤原:伝える仕事をしている人はみんな現場に行くと思いますが、できれば僕は仕事以外でもそうやってお店に通うことを半永久的にやりたいですね。僕が仕事を受けた分だけその店でお金を使って、トントンぐらいになればいいかなぐらいに思っています。お金はしっかりいただくんですけど、物々交換みたいにお店のサービスをずっと利用して、プラスマイナスゼロになっててもいいかなと。

逆に、そういうふうにお金を使ってもいいなと思えるようなところとお仕事したいなって思います。そうやって通っていると愛着も湧いてきて、長く続けたいなって思いますし。

ーとはいえ、失礼な言い方かもしれませんが、そんなふうにしていると手元にいくらも残らなかったりしませんか。

藤原:できたら今後は自分の生活に必要なところとお仕事したいなって思います。神戸市経済観光局農水産課がやっている神戸市の農漁業についてクリエイターと学生が連携して活動する「ノーギョ ギョギョ ギョギョー ラボラトリーズ」というプロジェクトがあるんですが、これをきっかけに農家さんとのつながりができてきて、CSA*を利用しています。こちらのグッゲンハイム邸のスタッフのみなさんも生活と近いところでお仕事されているので、僕もそういう仕事がしていきたいですね。
*CSA……コミュニティ・サポート・アグリカルチャーの略。生産者と直接つながり、前払いで農産物を買う仕組み

|やりたい仕事が来る環境に自分を置く

ー塩屋へ事務所を移して、大きく変わった点はありますか。

藤原:当たり前のことなんですけどでも、仕事は楽しい方がいいなと思うようになりました。以前は地元のスーパーのチラシなどを手掛けていたんですが、夜中までずっとやっているような状況でしんどいなと思っていました。たまたまデザインヒーローの和田武大さんに声をかけてもらって「ちびっこうべ」*に参加したことで神戸市のクリエイターの方とつながりができたんです。

仕事って飯食うためにやるだけじゃなかなかしんどいなと思っていたタイミングで、楽しく仕事している人たちが周りに多い環境に自分を持っていくことで、自分もそういうふうに仕事ができるようになってきたと感じます。

*ちびっこうべ……デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)が子どもの創造性を育むことを目的として、2012年から開催している体験プログラム

ー事務所はシェアオフィスで、他にも何人かクリエイターさんが借りられているそうですが、よかったことはありますか。

藤原:イラストレーターの山内庸資さんが隣でお仕事しているので、「いいイラストレーターさんいないですか」とすぐ聞けるところですね。この人を起用したいというときにも相談させてもらったりしています。

事務所での様子。左にちらと写るのが山内庸資さん。
「ノーギョギョギョギョギョ―ラボラトリーズ」で制作した「こうべのしらす」。参加学生による冊子編集に、山内さんがディレクションとイラスト、藤原さんがデザインを担当している。

ー結構来た球を打つという感じのスタイルでお仕事されてますけど、どういうデザイナーになりたいといったような目標はあるんですか?

藤原:近所で仕事できたらいいかなぐらいの感じです。自分の手の届く範囲でできればいいなと思っています。今は専門学校の非常勤講師をしているんですが、若い人とチームを組んでいけたらいいなっていうのが今後の目標ですね。そこでもっと楽しいことができたら。僕は自分が手を動かすことにこだわりはないので、自分は必ずしも手を動かす立場じゃなくてもいいと思っています。

ーデザイナーの方は、自分のデザインを見てほしいというタイプの方もいると思うんですけど、藤原さんの場合はものすごく柔軟さを感じました。

藤原:基本的にお仕事に対しては“スポンジ感”を出していきたいなと思っていて、「吸収したい、自分の中に入れるものは入れていきたい」です。デザインはずっと何かの勉強だとも思っていて、たとえば、行政の仕事だとしても、福祉のことだったり農業のことだったりと、それぞれに分野が違ってくるので、自分が学べるだけの知識は吸い込まなければ。そして、それがいっぱいになってジュッて出た分が、僕のデザインだと思っています。

ー我を出すだけがデザインじゃないということですね。

藤原:そうですね。お客さんの我を活かして、僕がそれをちゃんと表現できれば成立する仕事なので、自分の我はなくていいのかなって思っています。僕は学生のときから人の話を聞くのめっちゃ好きで、飲みの場でいろんな人の話を聞いてるといろんなものが見えてくるのがすごく好きだったんです。だから、今もその延長で仕事をしているような部分があります。

緊張してとか、無理に何か頑張ろうというよりかは、自然体で仕事するのが基本なので、仕事でも他の人にしゃべってもらうのが一番居心地いいです。僕の性格なんでしょうけど、何かこうグイグイ来られるとびっくりするので、自分でもあんまりグイグイいけない。今すごく楽しいので、今の仕事の仕方が自分に合っていると思いますね。

藤原幸司

広告制作会社等の勤務を経て、2012年2月より4S DESIGNとして活動を開始。
飲食店などの印刷物のデザインを中心に、企業と学生が商品を開発する企画や商店街の活性化などの活動にも取り組む。神戸電子専門学校グラフィック学科非常勤講師。
https://4s-design.net/

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